「ChatGPTに自社をおすすめしてほしい」は、正しい願望である

ChatGPTの週間アクティブユーザー数は4億人を超えた。Capgemini Research Instituteの調査によれば、消費者の58%が従来の検索エンジンではなくAIアシスタントを通じて製品やサービスを検索しているという。この数字は今後さらに加速する。

こうした環境下において、「ChatGPTに自社の商品をおすすめしてもらいたい」という願望は、もはやマーケティング担当者の個人的な願望ではない。AIのおすすめに自社が載るかどうかは、ビジネスの生死を分ける構造的な問題になりつつある。

しかし、その具体的な手法については、まだ体系的な知見が整理されていない。本稿では、GEO(Generative Engine Optimization)の専門家として蓄積してきた実測データと研究知見をもとに、ChatGPTに推薦されるための具体的な施策を解説する。

ChatGPTはなぜ特定の企業を「おすすめ」するのか

まず前提として、ChatGPTの推薦メカニズムを正確に理解する必要がある。ChatGPTが回答を生成する際の情報源は、大きく分けて以下の二つである。

情報源1:ウェブ検索(Bing)からのリアルタイム情報

ChatGPTは、Browse with Bingの機能を通じてリアルタイムのウェブ情報を取得する。ユーザーの質問に対し、Bingの検索結果を参照しながら回答を生成するため、ウェブ上での自社の存在感がChatGPTの推薦に直結する。

情報源2:学習データに含まれる情報

GPTモデルのトレーニングに使用されたデータセットに自社の情報がどの程度、どのような文脈で含まれているかも重要な要素である。Wikipedia、ニュース記事、業界レポートなど、権威性の高いソースに自社が言及されているほど、AIの回答に登場しやすくなる。

引用権威性(Citation Authority)という概念

ここで重要なのが、引用権威性(Citation Authority)という概念である。これは、AIが回答を生成する際に「どの情報源をどの程度信頼するか」を示す指標であり、従来のSEOにおけるドメインオーソリティに相当する概念だ。

Columbia UniversityとThe Conversationの共同研究によれば、ChatGPTの事実確認クエリに対する回答において、Wikipediaが引用元の47.9%を占めている。つまり、AIは情報源を均等に参照しているのではなく、ごく少数の信頼できるソースに大きく依存している。

ChatGPTは1回の回答あたり平均2〜7ドメインしか引用しない。つまり、AIのおすすめ枠は極めて限られている。その限られた枠に入るために何をすべきかが、GEOの核心である。

ChatGPTにおすすめされるための5つの施策

以下に、弊社の実測データと学術研究の知見を統合した、ChatGPTに推薦されるための5つの施策を示す。

01第三者メディアへの露出を増やす

Georgia Institute of TechnologyとPrinceton Universityの共同研究(GEO: Generative Engine Optimization, 2024)によれば、AIの引用の89%はEarned media(第三者による言及)から生成されている。自社サイトのコンテンツだけをいくら改善しても、AIの推薦には限界がある。

具体的には以下のようなメディアへの露出が効果的である。

  • 業界専門メディアへの寄稿・取材対応
  • ニュースリリースの定期配信(PR TIMES等)
  • 業界団体・カンファレンスでの登壇
  • 第三者によるレビュー・比較記事への掲載
  • Wikipedia等の百科事典的メディアへの掲載(特筆性の担保が前提)

重要なのは、単にメディアに載ることではなく、自社の専門性・独自性が具体的に記述された状態で露出することである。AIは「A社は〇〇の分野で実績がある」のような具体的な文脈情報を拾い上げ、推薦理由として使用する。

02構造化データ・JSON-LDの整備

自社サイトにJSON-LD形式の構造化データを正しく実装することは、AIが自社の情報を正確に理解するうえで不可欠である。Organization、Product、Service、FAQPage、HowToなどのスキーマを適切にマークアップすることで、AIは自社の事業内容・所在地・提供サービスを正確に把握できるようになる。

実務上のポイント

構造化データは「AIに正しい情報を正しい形式で渡す」ための手段である。特にFAQPageスキーマは、ユーザーの質問に対してAIが回答を生成する際に、そのまま参照されるケースが多い。自社の強みや差別化ポイントをFAQ形式で整理し、構造化データとして実装することを推奨する。

03統計データ・具体的な数字を盛り込む

前述のGeorgia Tech / Princeton共同研究では、コンテンツに統計データや具体的な数値を含めることで、AIによる引用率が最大40%向上することが実証されている。

AIは回答の信頼性を担保するために、数値的根拠を積極的に参照する傾向がある。「業界トップクラスの実績」ではなく「導入企業数347社、平均ROI 215%」のように記述することで、AIの引用対象になる確率は大幅に高まる。

自社サイト、プレスリリース、事例ページのすべてにおいて、可能な限り定量的な表現を用いるべきである。

04llms.txtの設置とAIクローラーの許可

llms.txtは、LLM(大規模言語モデル)向けにサイトの構造と重要情報を平文でまとめたファイルである。robots.txtがウェブクローラー向けの案内であるのに対し、llms.txtはAI向けの案内として機能する。

llms.txtをサイトのルートディレクトリに設置し、自社の事業概要・サービス・実績・連絡先などの重要情報をLLMが読み取りやすい形式で記述する。同時に、robots.txtにおいてAIクローラー(OAI-SearchBot、GPTBot、Google-Extended等)のアクセスを許可しているかも確認する必要がある。

AIクローラーを意図せずブロックしている企業は少なくない。robots.txtの設定は必ず確認すべきである。

05英語コンテンツの整備

これは日本企業にとって特に重要な施策でありながら、見落とされがちなポイントである。ChatGPTは英語圏の情報ソースを優先的に参照する傾向がある。

弊社の実測調査において、SmartHRやカオナビといった日本国内で高い知名度を持つSaaS企業が、日本語のクエリであっても推薦されないケースを確認している。これは、英語圏のソースにおけるこれらの企業への言及が限定的であることが一因と考えられる。

具体的な対応策としては以下が挙げられる。

  • 自社サイトの英語版を整備する(少なくとも会社概要・主要サービスページ)
  • 英語のプレスリリースを配信する
  • 海外の業界ディレクトリやレビューサイトに登録する
  • 英語の事例ページ・ホワイトペーパーを公開する

ただし、翻訳の品質は極めて重要である。機械翻訳のままのコンテンツはAIにも低品質と判断されるリスクがあるため、ネイティブチェックを経たコンテンツを公開することを推奨する。

やってはいけないこと

ChatGPTに「どうすればおすすめされるか」を聞いて実行する

これは最も陥りやすい落とし穴である。ChatGPTに「ChatGPTにおすすめされるにはどうすればいいですか?」と質問すると、一般的に正しいとされるアドバイスが返ってくる。しかし、ここに構造的な問題がある。

ChatGPTが回答する施策は、「既にAIに認知されている企業」がさらに上位を狙うための施策である。今現在AIに認知されていない商品・サービスを「認知させる」ためのナレッジとは、根本的に異なる。

たとえばChatGPTは「質の高いコンテンツを作りましょう」と回答するが、AIに認知されていない状態では、いくら質の高いコンテンツを自社サイトに掲載しても、AIの引用対象にはならない。これは前述の「引用の89%がEarned media」というデータが如実に示している。

SEOの手法をそのまま流用する

SEOとGEOには共通する要素もあるが、根本的な違いがある。SEOでは「検索結果の上位に表示される」ことがゴールだが、GEOでは「AIの回答文中に推薦として言及される」ことがゴールである。

キーワードの詰め込み、被リンク施策、ページ速度の改善といったSEO的アプローチは、GEOにおいては直接的な効果が限定的である。AIは検索順位ではなく、情報の信頼性・具体性・文脈の適合性をもとに引用先を選定する。

効果測定の方法

GA4でChatGPTからの流入を確認する

ChatGPTはインライン引用(回答文中のリンク)にUTMパラメータを自動的に付与する。弊社の実測でこの仕様を確認している。そのため、GA4において以下の方法でChatGPTからの流入を計測できる。

GA4での確認方法

レポート > 集客 > トラフィック獲得 で、ソース「chatgpt.com」を確認する。または、探索レポートで utm_source = chatgpt.com をフィルタリングすることで、ChatGPT経由のセッション数・コンバージョンを計測できる。

定点観測の重要性

GEO施策の効果は一朝一夕には現れない。ChatGPTの回答は、ウェブ検索のインデックスとモデルの学習データの両方に依存するため、継続的なモニタリングが不可欠である。

弊社では、主要なプロンプト(クエリ)を定期的にChatGPTに投入し、自社クライアントの推薦状況を定量的に追跡するサービスを提供している。推薦の有無だけでなく、推薦順位、推薦文脈、競合との相対的なポジショニングまでを可視化することで、施策の効果を正確に評価できる。

まとめ:GEO対策は今がブルーオーシャン

ChatGPTをはじめとする生成AIの利用者は急速に拡大しており、「AIに推薦される企業」と「されない企業」の格差は今後さらに拡大する。

しかし、GEO対策に体系的に取り組んでいる企業は、現時点ではごく少数である。これはすなわち、今この瞬間が先行者利得を得る最大のチャンスであることを意味する。

本稿で解説した5つの施策は、いずれも一朝一夕で完了するものではない。しかし、正しい方向に一歩を踏み出すことで、競合に対して構造的な優位性を築くことができる。

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