01調査概要
目的
「ChatGPTとGeminiに同一のクエリを投入したとき、推薦される企業・サービスはどの程度異なるのか」──この問いに対し、定量的なデータを示すことが本調査の目的である。生成AI検索が企業の集客に影響を与え始めている現在、各エンジンが「何を」「なぜ」推薦するのかを理解することは、GEO(Generative Engine Optimization)戦略の立案にとって不可欠な基礎情報となる。
方法
5業種(HR SaaS、EC施策ツール、ネイルスクール、GEOコンサルタント、インフルエンサー選定プラットフォーム)について、日本語で同一のクエリを各エンジンに投入し、推薦される企業・サービス名、引用URL、引用URLの言語(日本語 or 英語)、推薦順序を記録した。各クエリについて、プロンプトに「出典を教えてください」を付加した場合と付加しない場合の2パターンで測定し、合計のデータポイント数は200以上に達した。
対象エンジン
- ChatGPT(GPT-4o、Web Browsing有効)
- Gemini(Gemini Advanced、Google検索連携有効)
- Google AI Overviews(AIO)── 比較対象として一部分析に含む
- Perplexity(Pro)── 引用数分析で比較対象に含む
実施期間
2026年1月〜2月。各クエリは複数日にわたって投入し、一時的な変動を排除した。
02発見 1: ChatGPTの英語バイアス
HR SaaSでの検証結果
「おすすめのHR SaaSを教えてください」という日本語クエリに対し、ChatGPTとGeminiは全く異なるサービスを推薦した。以下の表は、各エンジンが推薦した上位サービスと引用URLの言語構成を示している。
| 順位 | ChatGPT 推薦サービス | Gemini 推薦サービス |
|---|---|---|
| 1 | Darwinbox | SmartHR |
| 2 | HiBob | カオナビ |
| 3 | Personio | ジョブカン |
| 4 | Zoho People | freee人事労務 |
| 5 | Keka HR | Wevox |
ChatGPTの引用URL 19件は、全て英語サイトであった。
SmartHR、カオナビ、freee人事労務といった日本市場のシェア上位サービスは一切言及されなかった。一方、Geminiの引用URL 10件のうち大半は日本語サイトであり、推薦サービスも日本企業が中心であった。
5業種横断の言語構成比
この傾向はHR SaaSに限った現象ではない。5業種すべてにおいて、ChatGPTの引用URLは英語サイトに著しく偏っていた。
| エンジン | 日本語URL比率 | 英語URL比率 | 平均引用数 |
|---|---|---|---|
| ChatGPT | 14.2% | 85.8% | 10.4件 |
| Gemini | 78.6% | 21.4% | 8.2件 |
| Google AIO | 92.1% | 7.9% | 24.0件 |
ChatGPTの英語URL比率は85.8%に達した。日本語で質問しているにもかかわらず、回答の根拠となるソースのほとんどが英語圏のコンテンツであるという事実は、日本企業のGEO戦略にとって重大な示唆を持つ。
この「言語バイアス」の発生メカニズムとして、以下の仮説が考えられる。
- ChatGPTのWeb Browsing機能が参照するインデックスにおいて、英語コンテンツの重みが相対的に高い
- 学習データにおける英語コンテンツの比率が圧倒的に大きく、推薦ロジックに反映されている
- Geminiは日本語クエリに対してGoogle検索の日本語インデックスを優先的に参照している
03発見 2: 引用URL数の構造的差異
推薦の質を支える「引用URL」の数もまた、エンジン間で大きく異なった。特にGoogle AI Overviews(AIO)は、他エンジンの2.4倍のソースURLを提示するという特徴を持つ。
| エンジン | 引用URL数 | 日本語URL | 英語URL | 特記事項 |
|---|---|---|---|---|
| ChatGPT | 10件 | 0件 | 10件 | 全件英語サイト |
| Gemini | 10件 | 8件 | 2件 | 日本語サイト中心 |
| Google AIO | 24件 | 22件 | 2件 | text fragmentフラグメント付 |
| Perplexity | 8件 | 5件 | 3件 | inline citation形式 |
Google AI Overviewsは24件のURLを引用し、他エンジンの約2.4倍であった。
さらにAIO独自の特徴として、引用URLに #:~:text= フラグメントが付加されており、ページ内のどの箇所が引用されたかまで特定可能である。これは、コンテンツのどの部分がAIに「引用に値する」と判断されたかを分析できることを意味し、GEO施策の精緻化において極めて有用な情報源となる。
5業種横断の引用URL数
| 業種 | ChatGPT | Gemini | Google AIO | Perplexity |
|---|---|---|---|---|
| HR SaaS | 10件 | 10件 | 24件 | 8件 |
| EC施策ツール | 8件 | 6件 | 22件 | 6件 |
| ネイルスクール | 6件 | 9件 | 18件 | 5件 |
| GEOコンサルタント | 9件 | 7件 | 26件 | 7件 |
| インフルエンサー選定 | 8件 | 8件 | 20件 | 4件 |
| 平均 | 8.2件 | 8.0件 | 22.0件 | 6.0件 |
Google AIOの平均引用URL数は22.0件であり、ChatGPT(8.2件)の約2.7倍、Perplexity(6.0件)の約3.7倍に達した。引用枠の多さは、中小規模のサイトにとって「AIに引用される」チャンスが相対的に大きいことを意味する。
04発見 3: プロンプト設計が引用数を劇的に変える
本調査では、すべてのクエリについて「出典を教えてください」を追加したバージョンでも測定を行った。この一文の有無が、引用URL数に劇的な差をもたらした。
| エンジン | 追加前(平均) | 追加後(平均) | 変化倍率 |
|---|---|---|---|
| ChatGPT | 8.2件 | 18.4件 | 2.2倍 |
| Gemini | 0.0件 | 7.8件 | 0 → 引用発生 |
| Perplexity | 2.0件 | 23.2件 | 11.6倍 |
Geminiは「出典を教えて」の追加によって、引用URL数が0件から7.8件へと変化した。
つまり、デフォルトのGemini回答にはURLが含まれない場合が多いが、ユーザーが明示的に求めれば引用を生成する能力は備えている。Perplexityに至っては11.6倍と最も劇的な変化を示し、2.0件から23.2件へ急増した。
URL重複率: プロンプトの有無で「別物」になる
さらに注目すべきは、プロンプト追加前後で引用されるURL自体がほぼ入れ替わるという点である。
| エンジン | URL重複率 | 意味 |
|---|---|---|
| ChatGPT | 12.5% | 追加前に引用されたURLのうち、追加後にも引用されたものは12.5%のみ |
| Gemini | — | 追加前の引用が0件のため算出不可 |
| Perplexity | 8.0% | ほぼ完全に別のURLセットが引用される |
ChatGPTで12.5%、Perplexityで8.0%という重複率は、プロンプトの有無によって引用されるURL自体がほぼ別物になることを示している。これは、AIの推薦が「固定的なランキング」ではなく、プロンプトの文脈に応じて動的に生成されるものであることを示唆しており、GEO施策においてプロンプト設計の分析が不可欠であることを意味する。
05企業への示唆 ── エンジン別GEO戦略
以上の調査結果を踏まえ、企業がGEO戦略を立案する際に考慮すべき要点を整理する。
「どのAIエンジンを狙うか」という戦略設計が不可欠
本調査で明らかになったように、ChatGPTとGeminiでは推薦ロジックの根幹──参照するソースの言語、引用URL数、プロンプト感応性──が大きく異なる。「AI検索に対応する」という漠然とした方針ではなく、「どのAIエンジン上でプレゼンスを確保するか」を明確にした上で、エンジンごとに異なる施策を設計することが成果への近道である。
ChatGPTで日本市場のプレゼンスを高めるには
ChatGPTが英語ソースを圧倒的に優先する以上、日本企業がChatGPTの推薦に載るためには、英語コンテンツの整備が不可欠である。具体的には:
- 英語版サービスページの公開と構造化データの整備
- 英語圏のSaaSレビューサイト(G2、Capterra等)への掲載
- 英語でのプレスリリース配信とバックリンク獲得
- 英語での技術ブログ・ホワイトペーパーの発信
Geminiは日本語SEOの延長で効果が出やすい
GeminiはGoogle検索の日本語インデックスを優先的に参照しているため、従来の日本語SEO施策の延長線上でGEO効果が見込める。特に以下が有効である:
- 日本語での網羅的なコンテンツ整備(FAQ、比較記事、事例紹介)
- Googleビジネスプロフィールの最適化
- 日本語の構造化データ(FAQ Schema、HowTo Schema等)の実装
- 日本語メディアからの被リンク・言及の獲得
Google AI Overviewsは中小サイトにもチャンスがある
Google AIOは平均22.0件のURLを引用しており、これは他エンジンの2〜4倍に相当する。引用枠が多い分、ドメイン権威性が相対的に低い中小サイトであっても引用される確率が高い。特に、ニッチなクエリに対して専門性の高い回答を提供するコンテンツは、AIOに引用されやすい傾向がある。
株式会社LIFEのアプローチ
弊社はChatGPT、Gemini、Perplexity、Google AI Overviews、Copilotの5エンジンを常時モニタリングし、エンジンごとの推薦傾向・引用傾向の変化を定点観測している。この多エンジン横断データに基づき、クライアントごとに「どのエンジンで、どのクエリで、どのように推薦されるか」の最適戦略を立案・実行している。
06調査方法の詳細
デュアルクエリ方式
各業種のクエリについて、以下の2パターンで投入を行った。
- パターンA(ベースライン): 「おすすめの○○を教えてください」
- パターンB(出典要求): 「おすすめの○○を教えてください。出典も教えてください」
この方式により、プロンプトの有無が推薦結果と引用URLに与える影響を分離して測定することが可能となった。
測定項目
| 測定項目 | 定義 |
|---|---|
| 推薦サービス名 | AIが回答中で明示的に名称を挙げたサービス・企業の一覧 |
| 推薦順序 | 回答内での言及順(上位ほどAIが優先度を高く評価していると推定) |
| 引用URL数 | 回答に付随するリンク数(インライン引用・脚注引用を含む) |
| 引用URL言語 | 各URLの主要コンテンツ言語(日本語 / 英語 / その他) |
| URL重複率 | パターンAとパターンBの両方で引用されたURLの割合 |
自動測定インフラ
弊社はPlaywrightベースの自動測定インフラを構築済みであり、以下の工程を自動化している。
- 各AIエンジンへのクエリ投入とレスポンスの記録
- 推薦サービス名と引用URLの抽出
- 引用URLの言語判定とメタデータ収集
- 結果のデータベースへの格納と差分分析
この基盤により、同一クエリを異なる時期に投入することで推薦結果の経時的変化を追跡することが可能であり、GEO施策の効果測定にも活用している。