01調査概要
背景と目的
「AIにおすすめを聞いたとき、最初に名前が挙がるブランド」──このポジションがどれほど購買行動に影響するかについて、2026年4月に Growth Memo が公開した調査では、Google の AI Mode 利用者の 88% が、AI が提示したブランドのショートリストを外部チェックなしに受け入れていた。さらにAI Mode の「トップピック」がユーザーの最終選択になる確率は 74%と報告されている(出典: Growth Memo(Position Digital 集計, 2026年4月))。
これは Google AI Mode に限定された数字であり、ChatGPT・Gemini・Perplexity・AI Overviews を含む他エンジンにそのまま当てはめられるものではない。とはいえ、AI に「最初に名前を挙げてもらう」ポジションがユーザーの選択を強く方向づけるという傾向自体は、各 AI 検索体験の本質的な特徴と考えられる。
では、その「1位」というポジションは、エンジンや業界をまたいだときに、どの程度の安定性を持つのか。1度 1位として推薦されたブランドは、翌週も 1位なのか。それとも、来週には別のブランドに置き換わってしまうのか。本調査では、株式会社LIFEが運用するGEO AIO TRACKER(定点観測ツール)のデータを用いて、4エンジンにおける「AI推奨1位の翌週固定率」を集計した。
データ規模
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 1位を観測したクエリ系列数 | 185系列 |
| クエリ単位の連続観測ペア数 | 1,400組超 |
| 調査対象キーワード | 37件 |
| 測定期間 | 2026年2月27日〜5月3日 |
| 観測頻度 | 週1回・各クエリ同条件で実行 |
| 対象エンジン | ChatGPT / Gemini / Perplexity / Google AI Overviews |
・100: 回答本文の最上位で推薦された(=1位)
・80: 回答本文の2位で推薦・紹介された
・60: 回答本文の3位で推薦・紹介された
・40: 回答本文に表示はあるが、4位以下(4位/5位/6位の区別は記録上不可、まとめて「4位以下で表示あり」と扱う)
・20: 回答本文には登場しないが、参照ドメインリストに自社ドメインが含まれていた(=ドメインのみ参照)
・0: 回答本文・参照ドメインリストのいずれにも登場しない(=未参照)
「翌週固定率」とは、score=100を観測した翌週の同一クエリ・同一エンジンで再びscore=100が観測された割合である。
02全体結果 ── 翌週固定率は50.3%
4エンジン合算の集計結果は、以下の通りである。
あるブランドがAIの回答で1位として推奨された週、翌週も同じく1位だった割合は50.3%。
言い換えれば、AI推奨1位を取ったブランドの約半数は1週間後には2位以下に落ちている。「1度AIに気に入られればしばらく安泰」というイメージとは異なる結果となった。
この50.3%という数字は、単純な平均値ではなく、4エンジン合計で観測された「1位 → 翌週も1位」のペア数を「1位 → 翌週何らかの状態」のペア総数で割った全体比率である。エンジンによる出現頻度の違いを補正したい場合は次節のエンジン別固定率を参照されたい。
03エンジン別の固定率 ── 23%〜64%の格差
エンジンごとに切り分けて集計すると、安定性に明確な差が現れた。
| エンジン | 翌週固定率 | 傾向 |
|---|---|---|
| Google AI Overviews | 63.9% | 最も安定。1位の6割超が翌週も1位 |
| Gemini | 55.9% | AIOに次ぐ安定性 |
| ChatGPT | 40.0% | 1位の維持率は半数を切る |
| Perplexity | 23.3% | 最も流動的。1位の約4分の3が翌週には1位ではなくなる |
| 全体(4エンジン合算) | 50.3% | ── |
最も固定率が高かったAIO(63.9%)と、最も流動的だったPerplexity(23.3%)の差は2.7倍に達する。同じ「AIで1位」というポジションでも、エンジンによってその安定性は大きく異なる。
特にPerplexityでは、ある週に1位だったブランドの約4分の3が翌週には1位ではなくなっている(順位低下・言及消失を含む)。「Perplexityで1位を取った」という事実だけでは、来週の保証にはならないということを意味する。
041位陥落時の落下分布
1位から落ちたブランドは、いきなり圏外まで消えるのか、それとも2位・3位にソフトランディングするのか。ChatGPTを例に、score=100を取得した翌週のスコア分布を集計した。
| 翌週のスコア | 意味 | 割合 |
|---|---|---|
| 100 | 最上位推薦を維持(=1位維持) | 40% |
| 80 | 2位で推薦・紹介 | 23% |
| 60 | 3位で推薦・紹介 | 17% |
| 40 | 4位以下で表示あり(4位/5位/6位の区別は記録不可) | 6% |
| 20 | ドメインのみ参照(本文に登場せず参照リストに) | 3% |
| 0 | 未参照(本文・参照リストともに登場せず) | 11% |
分布を読み解くと、2つの傾向が見える。
- 1位 → 2位 or 3位のソフトランディングが多い: 落下したケース(60%)のうち、2位・3位までに踏みとどまったのは40ポイント分。緩やかな順位低下が主流である。
- 10件に1件は、1位から本文・参照リストともに姿を消す: 翌週にスコア0(未参照)になった割合は11%。LLMO における引用の不安定さがここに表れている。
1位を取ったあと「順位だけ下がる」のと「回答本文から消える」のは、施策上の意味が大きく異なる。前者(スコア40〜80)は競合の台頭への対応で済むが、後者(スコア20以下)は AI エンジンの引用ソース選定そのものから外れたことを意味する。
05業界カテゴリ別の固定パターン
同じエンジンでも、業界カテゴリで固定率に差が出た。サンプル数が一定以上ある組み合わせを抽出した結果、以下のような両極が観測された。業界×エンジン単位ではサンプルサイズが小さい組み合わせを含むため、各値は参考値として扱われたい(業界全体の傾向を断定するものではない)。
固定率が高い組み合わせ
| エンジン | 業界 | 翌週固定率 |
|---|---|---|
| Google AI Overviews | 金融 | 85.7% |
| Google AI Overviews | 教育 | 85.0% |
| Gemini | 自動車 | 80.0% |
| Gemini | 金融 | 77.8% |
固定率が低い組み合わせ
| エンジン | 業界 | 翌週固定率 |
|---|---|---|
| Google AI Overviews | SaaS | 22.2% |
| Google AI Overviews | EC | 16.7% |
| Perplexity | 金融 | 16.7% |
「定番プレイヤーが固まっている業界」は1位が動きにくく、「新興プレイヤーが次々出てくる業界」は1位が流動的。
金融・教育・自動車といった業界では、AI推奨の1位が継続的に固定される。一方、SaaSやECのように選択肢が多く動的な業界では、1位の入れ替わりが頻繁に起こる。AIの推薦は、業界そのものの構造をある程度反映している。
同じ金融業界でも、AIO では 85.7%、Perplexity では 16.7% と大きな開きが観測された(前述の通り業界×エンジン単位ではサンプル数が限られるため、絶対水準ではなく方向性として読まれたい)。エンジンごとに参照ソース・更新頻度・回答生成方式が異なることが、安定性の差として現れている可能性がある。
06観測実務への含意
本調査から、AI推奨の効果測定について次の3点が読み取れる。
1度のスコアで判断できない
翌週固定率が50.3%という水準は、ある観測時点のスコア単体では「定着した1位」と「たまたま1位」を区別できないことを意味する。AI推奨の効果測定には継続的な観測が前提となり、1点観測でのGEO施策評価は事実上成立しない。
業界によって投資リズムが変わる
金融・教育・自動車のように1位の固定率が高い業界では、上位を取った後の安定運用が想定できる。一方、SaaSやECのように流動性が高い業界では、上位を取った後も継続的なコンテンツ更新と第三者言及の獲得が求められる。自社の業界がどちらに属するかで、施策に投じる労力の配分は変わる。
圏外消滅とソフトランディングの違いを見る
1位から落ちる場合でも、2位・3位に踏みとどまるケースと圏外まで一気に消えるケースでは、原因も対処も異なる。前者は競合の台頭、後者はAIの引用ソース選定そのものから外れた可能性がある。順位の数値だけでなく「言及が残っているか」を併せて追う必要がある。