01問い ── 業界の通説と実データの空白
「SEOで上位を取れているサイトは、AIにもよく引用される傾向がある」──この主張は、GEO(生成AI検索最適化)の文脈でしばしば語られる。実例として、ある分析プラットフォーム(Otterly.AI)の調査では、AI引用と従来SEOパフォーマンスに正の相関があり「上位ランクするページがAIにもよく引用される」傾向が報告されている。
ただし、これは「相関はある」という定性的な観察であって、どの程度連動しているのかを定量的に示したデータは、業界全体で見てもまだ乏しい。SEO 1位を取ったらAIでも何%の確率で1位になるのか。SEO圏外のサイトは本当にAI推奨ゼロなのか。
本調査では、ある業界の地域検索データを使い、同一クエリにおけるSEO検索順位とAI推奨順位を1件ずつ突き合わせ、両者の連動性を3つの方法で測定した。
02調査方法 ── 何をどう測ったか
データセット
ある業界(地域密着サービス業)の地域検索における各事業者の順位データを使用した。各事業者ごとに以下の2つの順位を取得している。
- SEO順位: Google検索結果の自然検索(オーガニック)における順位。地域名を含むクエリで取得(例:「○○ 地域名」)。上位10位内に入っていない場合は「圏外」として扱った
- AI推奨順位: 同種クエリをAIに尋ねた際の、推奨リスト内での出現順位(1位〜10位、または非出現)
業界・件数の詳細は競合配慮のため非公開とするが、複数地域・数百件規模のデータである。「SEOで上位を取れているサイト」と「AIに推奨されるサイト」が同じか別かを、同一クエリ・同一事業者の単位で検証できる構造になっている。
3つの計算方法
順位データ同士の連動性は、計算方法によって見える顔が違う。本稿では役割の異なる3つを併用した。
| 計算方法 | 何を見るか | 役割 |
|---|---|---|
| TOP K 一致率 | SEO上位K件とAI推奨上位K件にどれくらい同じ事業者が含まれているか | 直感的な結論 |
| Spearman順位相関係数 | 2つの順位がどれだけ似た並び方をしているか(-1〜+1) | 連動性の数値裏付け |
| クロス集計(ヒートマップ) | AI順位とSEO順位の対応関係を全件分布で可視化 | 分布の偏りを見る |
03結果① ── TOP3 / TOP10 の一致率
まず最も直感的な指標から見ていく。「SEOで上位を取っている事業者は、AI推奨の上位にもいるのか?」を、TOP3とTOP10の2つの粒度で測った。
SEO TOP3に入っている事業者のうち、AI推奨でもTOP3に入っているのは約3割。残る約7割は、SEOで強くてもAI推奨では上位に出てこない。
TOP10まで枠を広げても一致率はほぼ変わらず、約35%。「SEOで強ければAIでも有利」という通説の感覚値より、はるかに低い水準だった。
言い換えると、SEO上位とAI推奨上位はおおむね3分の1しか重なっていない。SEOの順位表とAIの推奨リストを並べると、約3社に2社は片方にしか登場しないということになる。
04結果② ── 順位相関係数
一致率は「上位にいるかいないか」しか見ない。順位の高低まで含めた連動性を見るために、Spearman順位相関係数を計算した。
Spearman相関係数
(0.2〜0.4 = 弱い正の相関)
連動性はあるが小さい
得られた相関係数は ρ = 0.28。これは「弱い正の相関」と評価される水準である(一般に|ρ|=0〜0.2は無相関〜ごく弱い、0.2〜0.4は弱い、0.4〜0.7は中程度、0.7以上は強い、と解釈される)。
つまり、SEO順位とAI推奨順位には連動はあるが、その連動は小さい。SEOの順位を知っていてもAI推奨の順位を強くは予測できない、というのが数値の意味するところだ。前節の一致率「約35%」とも整合する結果となった。
05結果③ ── 順位の対応関係をヒートマップで見る
相関係数と一致率は全体の傾向を1〜2個の数字に圧縮してしまう。「どの順位帯がどう対応しているのか」を見るために、AI推奨順位(行)×SEO順位帯(列)のクロス集計をヒートマップで可視化した。各セルは、その行(AI推奨順位)内で各SEO順位帯に分布した事業者の割合(%)を示す。
ヒートマップから2つの傾向が読み取れる。
- AI推奨で上位になるほど、SEO圏外比率が下がる: AI 10位ではSEO圏外が89.4%、AI 1位では44.7%まで下がる。確かに連動はある
- ただしAI 1位の事業者の約半数(44.7%)は依然としてSEO圏外: 「AIに最も推奨されている事業者」の半分近くは、Google検索ではTOP10にすら入っていない
この「AI 1位なのにSEO圏外」の集団に注目してみる。
AIに「1番目におすすめ」と挙げられている事業者の中身を割ると、SEOで強いのは4割、SEOと関係なく選ばれているのが4.5割。
SEOの強さでAI推奨1位を説明できるのは半分にも満たない。残る半数は、SEOとは別のメカニズムで評価されていることを示唆する。
逆方向、「SEO 1位なのにAI推奨に出てこない」事業者も同程度の割合で観測された。SEOで1位を取っていてもAIにとっては「最有力候補ではない」ケースが、ほぼ同等の比率で存在する。
06考察 ── AI推奨はSEOの延長戦ではない
3つの計算結果はいずれも同じ方向を示している。SEOとAI推奨は連動しているが、独立性のほうが大きい。施策面での含意は次の3点に整理できる。
SEO 1位 = AI推奨1位、ではない
「SEOを強化すればAIにも自動的に評価される」という前提で投資配分を決めると、約半分のAI推奨ポジションは取り逃すことになる。SEOとAI推奨は独立した最適化対象として扱うべき水準の独立性が、本データでは観測された。
AI推奨はSEOの強さでは説明できない要素を含む
AI推奨1位の約45%がSEO圏外であるという結果は、AIが事業者を選ぶ際にSEO以外の評価軸を強く参照していることを示唆する。具体的にはAIエンジンが学習・引用する情報源(業界メディア、口コミプラットフォーム、ニュース記事、SNS言及など)の重みが、自社サイトの検索順位より大きく作用する可能性が高い。